気化熱による冷却「ベイパーチャンバー」はPCでも利用可能か?
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2022年時点で、ゲーミングPCの冷却といえば空冷か水冷かの2択ですよね。実は一部のサーバーで実用化されている冷却方式に、この2つのどちらにも当てはまらないものがあります。
それが「ベイパーチャンバー」方式です。今回は、あらたな冷却ソリューション「ベイパーチャンバー」を紹介します。
ベイパーチャンバーとは?
ベイパーチャンバーとは、金属製放熱部材のひとつであり、広い意味で言えばヒートパイプの仲間ですね。
薄く平らな金属を張り合わせ、中は空洞になっていて、さらに細い毛細管が張り巡らされています。また毛細管の中には水分が充填されています。
ベイパーチャンバーは非常に薄いにもかかわらず、それまで主流であったグラファイトシートよりも冷却性能が高いことから、今注目されている技術です。
主にスマートフォンなどの冷却に活用されているのですが、PC関連ではほとんど見かけません。
スマートフォンはスペースの関係上、空冷・水冷どちらの場合でも著しい制限があります。この制限を突破するために、超薄型の冷却ソリューションが必要になったため、急速に進化しています。
ベイパーチャンバーは「気化冷却」
上で述べた構造から「結局は水冷と同じじゃないの?」と感じる人もいるでしょう。私も最初はそう思いました。
しかし水冷は水分に熱をのせて移動させるため、ポンプなどで絶えず循環させなくてはなりませんが、ベイパーチャンバーにはポンプのような構造はありません。
なぜならベイパーチャンバーは「気化冷却」を利用しているからです。ベイパーチャンバーの中に満たされた水分がデバイスの高温によって蒸発することにより気化冷却が起こり、デバイスを冷やすというのが根本原理です。
厳密にいえば、水分から蒸気になることで熱を拡散・放出し、再び液体に戻ってデバイスを冷やすというサイクルを繰り返すわけですね。
もう一度整理すると、
- 空冷:デバイスに接触した金属板部分から熱を吸収、ヒートパイプで熱移動、ヒートシンクで熱を放出
- 水冷:デバイスに接触した部分から熱を吸収、水分で熱移動、ラジエーターで熱を放出
- ベイパーチャンバー(気化冷却):毛細管内部の水分で熱を吸収、水分の蒸発で熱を拡散・放出
といった具合に、根本的な原理が異なることがわかります。
ベイパーチャンバーはゲーミングPCにも適用されるか?
実はすでに一部のCPUクーラーに、ベイパーチャンバーが使われています。専門的なのであまり話題になりませんが、ヒートパイプに熱を渡すベースユニット部分に使われていますね。
おそらく世界で初めて採用したのはCooler MasterのハイエンドCPUクーラー「TPC812」だったと思います。2016年に発売されているので、すでに6年前です。
ただし、ベイパーチャンバーがメインというよりも、従来の空冷CPUクーラーの性能を上げるための機能ですので、仕組みとしては空冷そのものですね。
要は金属板部分からヒートパイプへの熱移動を効率的に行うために使われていて、熱の放出自体はヒートシンクで行っています。
前述したように本来ベイパーチャンバーは冷却のためのスペースが確保できない状況で威力を発揮しますから、超小型のミニPCやノートPCが向いています。
一部のゲーミングノートPCでは、すでにベイパーチャンバーを採用したモデルが登場していますね。また、冷却スペースを確保しにくく高温状態が続くM.2 SSDでも採用が始まりました。
2022年7月には、工業用グレードのM.2 SSD「N74V-M80」において、ベイパーチャンバー方式による冷却が搭載されていると発表がありました。
このようにベイパーチャンバーは小型・高発熱なデバイスと相性が良いので、今後はミニPCやゲーミングノートPCを中心に広まっていくかもしれません。
もし「こんな小さいのに冷却は…?」と疑問に思ったら、ベイパーチャンバーが使われていないかチェックしてみてくださいね。