SLC、MLC、TLCの耐久性はなぜ違うのか
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SSDの実現方式として、SLC、MLC、TLCがあることは皆さんご存じのとおりです。
3つの方式は、同じ容量でも価格が異なりますよね。最も安いのはTLCですね。さて、この3つの方式、耐久性が明確に異なります。
今回はSSDにおけるSLC、MLC、TLCの3方式を耐久性の面から解説していきたいと思います。
SLC、MLC、TLCの特徴
まず、3つの方式の特徴を理解しておきましょう。簡単にまとめると、以下のようになります。
SLC(Single-Level Cell)
- 1つのセルに1つのビットを格納する方式です。
- 高い書き込み/消去サイクル耐性を持ち、信頼性が高いとされています。
- 高速なデータ転送速度を実現します。
- 一般に高価で、容量効率が低い傾向があります。
MLC(Multi-Level Cell)
- 1つのセルに複数のビット(通常は2ビット)を格納する方式です。
- SLCに比べて容量効率が向上し、コストが低減します。
- SLCよりも書き込み/消去サイクル耐性が低く、消耗が早いとされています。
TLC(Triple-Level Cell)
- 1つのセルに3ビットを格納する方式です。
- MLCに比べてさらに容量効率が向上し、コストが低減します。
- 書き込み/消去サイクル耐性はMLCよりも低く、寿命が短いとされています。
- 一般に低価格帯のSSDで使用されることが多いです。
このように3つの方式は、「1セルの中に格納できるデータの量」「耐久性」で大きく違います。
最近はTLCであっても耐久性に優れたモデルがありますが、やはりSLCやMLCのほうが信頼性は上です。
SSDの耐久性に違いが出る理由
容量はともかくとして、なぜ耐久性に違いが出るのでしょうか。これは、SSDの仕組みが大きく関係しています。
SSDの耐久性=「電子の蓋」の耐久性
SSDはセルに電子を入れることでデータを保存します。電子はそのままの状態でいると逃げてしまうので、絶縁膜で「蓋」をするわけです。こうしてデータが保存されます。
新品のSSDはこの蓋がしっかり密閉できる状態です。一方で、使い込まれたSSDは何度も電子の出し入れをしているうちに蓋が劣化し、密閉力が落ちてきます。
密閉力が落ちると、蓋をしたはずのセルから電子が漏れ出してしまい、データが損失するわけです。これがSSDの「寿命」の正体だと考えてよいでしょう。
そしてここからが重要ですが、3つの方式で「蓋が正常に開閉できる回数」が決まっています。
- SLC:10万回~20万回
- MLC:1万回~
- TLC:3000~5000回程度
上記はあくまでも目安ですが、10万回と5000回では20倍以上の差があるわけで、SLCが耐久性に優れいている理由がわかりますね。
ちなみに、蓋で密閉できるとはいえ実際には電子が少しずつ漏れ続けており、データが損失されるまで非常に長い時間がかかります。
ただし、データが損失してしまうまでの時間は、蓋の劣化具合に比例して短くなっていくのです。
SLCでは損失までに4週間かかる状態であったとすると、TLCではほんの数日でデータ損失が発生します。
一般的に、SSDメーカーはデータが失われるまでの期間が「1年を切る」あたりを寿命の保証値としているようですね。
また、連続して大量のデータを書き込み続けるような場合、蓋の開閉が何度も発生するので、データが失われるまでの期間が1時間を切るようなレベルにまで劣化が進むこともあります。
近年はTLCでも耐久性は十分
さて、ここまでの内容からSSDの実現方式でなぜ耐久性が異なるのか、が理解できたのではないでしょうか。
耐久性重視ならばSLCがベストバイですが、現実問題としてかなり高価です。また、最近はQLC(1セルに4ビット格納)やPLC(1セルに5ビット格納)といった方式もあり、TLCはすでに「最も安い方式」ではありません。
なので、TLCを選んでもほとんど問題はないですが、耐久性については過信は禁物という点は覚えておきましょう。